他人の夢に入り込むことができる能力を有する来生夢衣と、彼女にカウンセリングを受けたことから恋人関係になった刑事の麻生健介が遭遇する事件を描いた作品です。こうしたSF的なミステリは好きなんですが、う~ん、いまひとつかなあというのが正直な感想です。
物語は二人の出会い、すれ違い、ハッピーエンドまでの流れを描きながら、その間に二人が遭遇する事件を描いていきます。自分の愛する人がこんな能力を持っていたら、恋人の刑事としては事件の捜査に役立てたいと思うのは無理からぬことでしょう。ただ、自分自身に置き換えると、やはり心が離れていくのが本当なところでしょう。夢の中に入られるということは、心の中をすべて覗かれるということです。いくら愛する人でも耐えられそうもありません。愛する二人の間であっても、知らない方が幸せだということもあるのではないでしょうか。
この作品は、「13階段」で江戸川乱歩賞を受賞した高野さんと、洋画・邦画への出資等映像ソフト事業を手がける(株)シネマゲート代表取締役社長の阪上仁志さんとの共作ですが、それからすると映像化を考えているのでしょうか。 |