多島さんの作品は“クリスマス黙示録”しか読んだことはないのですが(話題になった“症例A”は積ん読ままです。)、この作品はそれとは全く趣が異なる作品です。
“不思議島”という題名からは孤島ものという印象を持つのですが、残念ながらそうではありません。。島の中の旧家、精神の病気を持つ母親、勘当された叔父、島に戻ってきた自堕落な同級生とくれば、どちらかというと、ちょっと古い探偵小説の雰囲気で、ドロドロした殺人事件が起きるかと思いきや、これまた期待はずれ。話は少女の頃誘拐された主人公が、誘拐事件の謎を追うことによって、思いもよらない真実が現れてくるという話です。戦国時代の文献に登場する不思議な現象ー鏡を通り抜けたように、海峡の前と後ろに同じ世界があらわれたーをうまくトリックに使って、物語は進んでいきます。
女性の読者に怒られることを承知で言えば、この主人公の女性、簡単に男に惚れすぎです。男の手管にあれあれと思う間に参ってしまうのですから、どうしようもありません。この本にのめり込めなかったのは、この主人公のキャラクターのせいかもしれません。 |