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首藤瓜於の本棚

  1. 脳男
  2. ブックキーパー 脳男

脳男 講談社
 第46回江戸川乱歩賞受賞作品。
 連続爆弾魔のアジトで共犯者として逮捕された鈴木一郎と名乗る男。精神鑑定のため病院に収容されたが、鑑定の結果、全く感情の欠落した人間であることが判明した・・・。
 精神医学の知識のない僕にとっては、こうした感情のない、痛みも感じない、そのうえ人間離れした肉体的能力を有するロボットのような人間が実際に存在しうるのかは分からないが、この作品を読むと、そうなのかと納得してしまうほどきちんと書かれている。この主人公のキャラクターによってこの作品が成功したと言えるだろう。
 クライマックスはアッと思わせてくれる結果であったし、ストーリーとしてもとてもおもしろく読むことができた。この終わり方なら、続きがあるかなと期待したが、その後続編は書かれていないのは残念である。→その後、続編が書かれました。 
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ブックキーパー 脳男  講談社 
 シリーズ第3弾です。第1作は第46回江戸川乱歩賞受賞作で、刊行後すぐ読みましたが、その後2007年に刊行された第2作「指し手の顔 脳男Ⅱ」は未読です。読んだことのある第1作もすでに21年前の刊行なので、もうすっかりストーリーは忘れています。ただ、登場人物の鈴木一郎という感情のない男のキャラだけは印象に残っていました。
 警視庁捜査一課与件記録統計分析係第二分室の桜端道と鵜飼縣は、北海道、千葉、長崎という離れた場所で同じ犯人によると思われる残虐な殺人事件が発生していることに気づき事件の捜査を始める。すると、被害者3人の身元は架空のもので、全く関係のないと思われた3人の共通点が愛宕市にあることが判明する。愛宕市で同様の事件が起きたことを知った鵜飼縣は単身愛宕市に向かう。同じ頃、愛宕市内で警察が追っていた老人を鈴木一郎が助けるという事件が起きる。一方、ジャーナリストの有坂優子は3年前、愛宕市の交差点で車同士の追突で死者が出た事故が単独事故とされ、加害者が逮捕されていないことを知り、警察が隠蔽しているのではと調べ始める・・・。果たして連続殺人鬼は誰なのか。何のために殺人を行っているのか。警察が隠蔽した事故とどう関わってくるのか。鈴木一郎が助けた老人は何者なのか、そしてなぜ助けたのか等々様々な謎が読者の前に提示されます。
 シリーズ第2作は未読、第1作も鈴木一郎というキャラ以外覚えていない中で、読む前は大丈夫かなと思ったのですが、鈴木一郎のキャラさえ覚えていれば、意外と楽しむことができます(ただし、ラストのストーリーの着地点を理解するには、やはり前作までを読んでいた方がいいかもしれません。)。そこは鈴木一郎だけでなく、鈴木一郎とはまた別の意味でキャラ立ちしている鵜飼縣の登場にあったと思います。女性で警視という肩書に高身長で警察官とは思えないファッションセンス、もちろん頭も切れる、更に過去が隠されているという人物がいったい何者なのか。まだ彼女のことで隠されているものがあるような気がします。
 今回、登場人物が多いので頭の中で整理するのが大変です。そのうえ、重要な登場人物だと思っていた人物が途中でフェードアウトしてしまったりするので、「あれっ?」と思うことも多々ありました。
 続編を想像させる終わり方ですが、これまでを考えると、次作は何年後になるのか、そこは問題ですね。 
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