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殊能将之の本棚

  1. ハサミ男
  2. キマイラの新しい城
  3. 子どもの王様

ハサミ男 講談社ノベルス
 ハサミによって美少女を惨殺することから、マスコミによって「ハサミ男」と名づけられた連続殺人犯が主人公。3人目のターゲットである女子高生を殺すべく、「ハサミ男」は慎重に機会をうかがっていたが、なんと模倣犯に先を越されてしまう。ハサミ男は自ら犯人を捜すこととなる。
 メフィスト賞受賞のデビュー作。題名からして著者にやられたという感じだ。何か書くとネタばれになりそうなので、あまり書けないが、とにかくおもしろい。僕は森博嗣を除くとメフィスト賞にはどうも肌が合わない感じがして、手にとってみたことはなかった。たまたま「このミス」でも評判がよかったので、冬休みの時間があるときに読んだのだが、後悔はさせない作品であった。
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キマイラの新しい城 講談社ノベルス
 750年前、シメール城で非業の死を遂げた中世フランスの騎士の霊が、シメール城を移築してテーマパークを開設した会社の社長に乗り移り、自分を殺した犯人を捜せと言い出す。依頼を受けた名探偵(?)石動が750年前の事件の再現をしようとしたところ、再び城内で殺人事件が起こる。
 霊が乗り移るとか、750年前の殺人事件を捜査するとか、荒唐無稽な状況設定に購入を躊躇しましたが、「ハサミ男」の殊能作品だということで、思い切って購入して読みました(なにせ、積読状態になっている「黒い仏」の評判があまりよくないので、最初にこんな設定だと買うのは勇気がいるんですよね)。
 読み終わって、「黒い仏」の読後の感想に多い「なんなの!これは」というようなことはありませんでしたが、名探偵石動って、こんな探偵でしたっけ。
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子どもの王様  講談社文庫 
 ショウタは「カエデが丘団地」に往む小学生。同じ団地に住む同級生のトモヤは学校を休んで家で本ばかり読んでいる。そんなトモヤはショウタにいつも作り話をする。[カエデが丘団地」の外には何もない、4号館のコウダさんは西の良い魔女、7号館のイナムラさん
は東の悪い魔女だ等々。ある日、トモヤはいつものようにショウタに、子供の国の支配者で、子供を捕まえてきては召使いにするという“子どもの王様”の話をする。そんな話を聞いてから、ショウタは“子どもの王様”らしき男が団地の周囲に現れたのに気付く・・・。
 「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」という惹句のついた、ミステリーランドの記念すべき第1回配本です(読んだのはその文庫化されたものですが。)。
 増築を重ねたため、棟番号がばらばらの団地故のペンキのトリックはミステリーらしさがありましたが、“子どもの王様”の正体は想像できてしまい、“かつて子どもだったあなた”にしてみれば、謎というほどのものではありません。ミステリというより、子どもたちの生活を描いたものであり、ある意味、ショウタの成長物語といった方がいいかもしれません。
 “かつて子どもだったあなた”にはともかく、“少年少女”にはちょっとショッキングな結果で、後味はあまりよくありません。 
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