真犯人 ☆ | 小学館 |
高速道路のバス停近くで高齢の男性の刺殺死体が発見される。警察が捜査をする中で被害者が41年前の未解決に終わった幼児誘拐殺人事件の被害者の父親だったこと、死体発見現場が当時の事件の際、身代金の受渡しに指定された場所だったということが判明し、41年前の誘拐事件との関連が疑われる。捜査本部の日下らは、誘拐事件が時効を迎える直前、当時の県警本部長のパフォーマンスで事件の再捜査のため発足した特別捜査班の指揮を執った重藤に捜査の状況を関くために退職した重藤宅を訪れる・・・。 物語は時効直前の特別捜査班の捜査が中心に描かれていきます。キャリア官僚である本部長のパフォーマンスで立ち上げられた特別捜査班。時効を迎えてしまえば責任は特別捜査班の刑事たちが負うという流れが敷かれているという、特別捜査班に指名された刑事からすれば割を食ったと思わざるを得ない中で、刑事たちは再捜査を始めます。それぞれの刑事たちの捜査の過程やそこから生まれる対立が描かれていて非常に読み甲斐があります。 また、嫌々ながら特別捜査班に入ったが、ある事実を見つけて犯人と目星をつけた男を追い詰めるため突っ走ったり、新たな事実が明らかになっても常に冷静で確実な証拠がなければと自重したり、上司が自分の保身のために命じたことをしてしまったり等々、刑事たちの様々な性格を丁寧に描いており、物語の中にぐいぐい引き込まれます。 事件が起きたのは昭和の時代、それも昭和49年ということなので、当時の世相やある大事件が特別捜査班の捜査に大きく影響していたところにもリアルタイムにその時代を生きてきた身としては、おもしろく読むことができました。特に、常に隣近所を見ているおばさんなんて昭和の時代らしくて、“隣は何をする人ぞ”という現在にあっては、あまり見かけませんね。 肝心の41年にわたる“真犯人”探しの未に明らかにされた“真犯人”も納得の結末でした。 ラストシーンの特別捜査班の刑事たちのその後が語られるシーン、特にある刑事のその後にはグッときました。オススメです。 |
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