タイムトラベルがテーマの連作短編集です。タイムトラベルといっても、未来や過去のどの時にも自由にタイムトラベルできるわけではありません。この作品で描かれるのは、一日前に戻ってその一日をやり直すことです。それも気がついたら一日前に戻っており、自分で思うように一日前に戻るわけではありませんからやり直しの準備が。
好きな女性を交通事故から救おうとする青年、心臓病の子どもと約束したホームランを打とうとする野球選手、銀行強盗に撃たれるはずの銀行員を助けようとする男、借金を清算して家族とやり直そうと万馬券を買う男、不治の病の相棒との最後の漫才をしようとする男、一目惚れの女性に会いに行く途中でライパルの妻を助ける男たちが、もう一度やり直したいと思う一日前に戻ったときに、どうするのかが描かれていきます。
ただ、自分が意図しないで過去に戻っているのですから、完全にやり直す準備ができているわけではないし、簡単にやり直しが効くものではないものもあります。ハッピーエンドといかないものもありますが、ところが、ここでな〜んだと思ったら、すっかり作者の思うつぼです。すべてを読み終わったところで、そうだったのかぁと暖かな気持ちになれます。
※主人公たちはあまり悩まずに、過去に戻ったことを受容してしまいますが、そんなに簡単に納得しすぎという感じはしますが。 |