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獅子宮敏彦の本棚

  1. 砂楼に登りし者たち

砂楼に登りし者たち 東京創元社
 東京創元社ミステリフロンティアシリーズの1作です。
 ときは戦国時代、貧相な牛にまたがり弟子の若者を連れて諸国を放浪する老医師残夢が事件の謎を解く4つの物語からなる連作短編集です。
 密室から忽然と消えた姫、雪の上に被害者の足跡しかない殺人、近づくことができない状況下で刺殺された被害者等々トリック満載の謎が提示されます。
 トリック自体は目新しいものとはいえないものもあります。特に、第2話の「美濃蛇念堂」のトリックは、某有名作家の作品の中に出てきたトリックと同じですね。
 ただ、背景が戦国時代ということで、忍者だからこそというトリックもあって愉快ですし、「あの事件は実は」とか「あの人物がああなったのは実は」というストーリーになっていて、興味深く読むことができます。
 それに、時代物ということで、読みにくいかと思いましたが、登場人物に山本勘助、武田信玄、斎藤道三、明智光秀、織田信長等おなじみの人物が出てくるということで、話の中にすっと入っていきやすくなっています。
 他の武将たちも登場させてもらいたいと思いますが、第4話があの終わり方では、残念ながらシリーズ化は難しいでしょうか。

蛇足 
 第1話の「諏訪堕天使宮」には武田二十四将の一人であり、謎の人物といわれる山本勘助が登場しています。彼が半眼で片足が不自由だったというのは、有名ですが、そうなった理由を話として描いており、興味深く読みました。子供の頃の武田信玄も登場しますが、最後にちょこっと書かれていた信玄が側室とした諏訪の姫は、今では湖衣姫と呼ばれ、地元の信玄公祭にも登場します。
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