双子の姉妹である茂子と三重子。妹の三重子は父親の死亡した直後に発した母親の言葉にショックを受け、母と姉に絶縁宣言し、父方の祖父母の家で暮らしている。姉の茂子は変貌する妹を心配して妹と同じ高校に入学する。そこで再会した妹から関係を改善する代わりに表向きは「政治部」、その実態は「総理大臣暗殺クラブ」への入部を求められ、部長に就任する。
だいたい総理大臣を暗殺しようと考える三重子、そしてそれに同意する他のメンバーによる相当破天荒なストーリー展開といっていいでしょう。“総理大臣暗殺”という言葉からストレートなサスペンスを期待すると裏切られます。
その破天荒なストーリーを支えるメンバーが個性的というか変わり者ばかり。姉妹のほかは、情報収集のスペシャリスト“ムセン”、金持ちでクラブのスポンサーとなる“ボンボン”、風貌が中年のおじさんの“オッサン”の3人(途中から1人加わりますが、ネタバレになるので伏せます。)。
もちろん、総理大臣暗殺などという大それたことを高校生ができるわけがないのですから、青春大好き(?)な僕としては、当然クラブを舞台にした青春物語と期待して読み進みました。ところがこの5人、目的目指して格闘技や銃の使い方など真剣に取り組みます。こんなことあり得ないだろう、これってユーモア小説なのか、はたまたおバカ小説かと一度は途中で投げ出しそうになってしまいました。ちょっと、とっつきにくい作品かもしれません。
茂子らは、万引き犯に間違えられたオッサンの妹が撮られた写真を取り返そうとしたり、スナイパーをスカウトするためにスナイパーから出された条件である生徒会長選挙での生徒会長の狙撃を阻止しようとしたり、ムセンをチビと馬鹿にした陸上部のエースの鼻を明かすため運動会の部活動対抗リレーで勝利しようとしたり、スリの天才のお婆さんからその技術を学ぼうとするなど着々とクラブ活動を展開します。お互いに騙しあいながらの活動の中で各部員の隠されたキャラがしだいに現れてきます。
最後はとんでもないことが起きるのかと思ったら大団円となりますが、結局はこの作品は、思ったとおりの青春小説に着地しました。登場人物の一人が言います「学校にいれば、夢や惰性や退屈や恋なんかの全てが守られる。外から邪魔されない。人生の中でそういう時間があるって素敵なことだ」と。クラブのみんな、居場所を探していたのですね。 |