2006年最初の読了本は島本理生の「ナラタージュ」です。昨年宝島社の「この恋愛小説がすごい!」で第1位を獲得したほか、「本の雑誌」が選ぶ上半期ベスト10の第1位に輝くなど、恋愛小説として多くの読者の支持を得ました。
女性が主人公のこの作品を男性の僕が読んだ感想としては、文章は非常に読みやすいという印象を受けました。手に取った本の中には内容よりもとにかく文章が読みにくくて、それだけで嫌になってしまうものが多々あるのですが、この作品にはそういう点がなく、読みやすさといった点だけみれば、最近読んだ本の中でも上位に位置する作品でした。
ただ、内容的には、僕は主人公の女性泉はもちろん、葉山先生にも共感できませんでした。この先生全然わかっていません。あなたの優柔不断のところが妻を不幸にしたのにもかかわらず、また泉に対して同じことをしているのですよ。10歳も年下の教え子に頼ってどうするの!と言いたくなってしまいます。なんだかんだと教え子に甘えて、彼女の心を弄んでいるとしか思えません。女性はこんな男性に惹かれてしまうのでしょうか。
一方泉自身の態度も理解できません。泉は、彼女を好きな小野君が、彼女に深夜葉山先生から電話がかかってきてから疑心暗鬼となり、彼女の持ち物を調べたりすることに嫌悪感を持ちます。確かに、親しき仲にも礼儀ありです。好きあっている二人でも相手のプライヴァシーを尊重することは必要です。しかし、実際のところ、付き合っている男性がいることを知っていながら真夜中に電話をかけてくる葉山先生自身の行い、そして別の人と付き合っていながら先生への手紙を捨てられない彼女自身の態度にこそ問題があるのであって、彼の行動を無理もないと思ってしまうのは僕だけではないでしょう。
とにかく、読んでいてこの二人にはイライラさせられてしまいました。正直のところ、この作品は僕には合いません。 |