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柴田翔の本棚

  1. されどわれらが日々
  2. 贈る言葉
  3. 燕のいる風景

されどわれらが日々 文春文庫
 第51回芥川賞受賞作品。
 この本を文庫本で購入したのは大学1年生の頃であった。今ではすっかり焼けて黄ばんでしまったが、いまだに手元に残っている。あの当時は大学生になって、少し背伸びをした読書をしてみようと思ったのだろうか。
 この本は60年安保の頃の時代に生きる学生を主人公にしている。まだ、学生運動、学生闘争という言葉が生きていた時代だ。そんな時代に乗り遅れた僕らは、この本を読んでそんな時代の空気を吸おうとしていたのかもしれない。
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贈る言葉 新潮文庫
 就職したばかりの頃読んだ作品。柴田翔の作品は大学生が読んでいると、その当時ちょっとカッコイイという感じの本だった。とはいえ、就職してまだ文庫本を買って読んでいたということは、精神的には社会へ出て行くことを拒否していた、あるいは大学生という甘えにまだ浸っていたいという心の表れだったのだろうか。
 話は、大学時代結ばれることなく別れた過去の恋人に語りかける形をとった表題作「贈る言葉」と「十年後」の2編の中編からなる。
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燕のいる風景 筑摩書房
 表題作ほか8編からなる短編集です。なかでも印象深いのは「街の情景」です。「街の情景 その1」は男女の別れの場面を描いています。といっても、男のセリフはただひとことだけで、あとは男をなじる女のセリフのみです。これは男性の描いた別れの場面ですが、女性の方はこの場面をどう考えるのでしょうか。聞いてみたい気がします。さて、最後男がただひとこと言った後は果たして・・・。
 もう一つの「街の情景 その2」は、主人公が街でネコと名乗る女の子と知り合い、そのネコをオートバイの後ろに乗せて走っているときに、オートバイに乗った男達に取り囲まれる“発端または古風な物語”から選択肢と題する3つの話に分かれます。ネコを助けて二人で逃げる“現代風ロマン主義”、ネコを助けようとして殺されることになってしまう“蓋然性”、そして、ネコが乱暴されるのを見ているしかない“沈黙の罪または継続する時間”に分かれます。若い頃読んだときに、果たして自分はどれを選ぶのかを真剣に考えてしまったものです。ただ、結論としては今でもどれをとるのか分かりませんが・・・。
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