第133回直木賞受賞作品です。いつもの朱川作品らしい昭和30,40年代を舞台にした6編からなる短編集です。
子ども時代をその年代に過ごした身としては、いつも朱川作品を読むとノスタルジックな気持ちになってしまうのですが、今回は今まで読んだ作品のようには、物語の中に入っていくことができませんでした。どうしてなんでしょう。すべてが大阪を舞台にしたもので、自分の子ども時代とは、どことなく雰囲気が違っていたからでしょうか。とにかく大阪の匂いが強い作品でした。
特に、死んだ叔父の遺体を載せた霊柩車が火葬場を前にして急に動かなくなってしまうドタバタを描いた「摩訶不思議」などは、それが一番感じられた作品です。完全に大阪のお笑いですよね。最後に女3人でそうめんを食べるところは愉快です。今まで読んだ作品ではホラーや感動の作品が多かったのですが、笑いが中心にある話というのは初めてではなかったでしょうか。
6編の中では、自分が他人の生まれ変わりだという妹を一生懸命守ろうとする兄を描く表題作「花まんま」が一番心に残った作品です。この兄の健気さには思わず頑張れと声援を送りたくなってしまいます。 |