姉が危篤状態だとの連絡で病院に駆けつけた主人公の小児科医押村。幼い頃両親を事故で亡くした二人は、親戚に離ればなれに預けられたが、姉は親戚の家を飛び出し18年間押村とは音信不通の状態が続いていた。姉はサラ金の事務所で拳銃で撃たれたらしい。さらに姉は事件の前日に結婚したばかりであったが、結婚相手はかつて殺人を犯した男で、行方不明となっていることがわかる。姉はなぜサラ金の事務所にいたのか。義兄が行方不明なのはなぜなのか。押村は、姉の空白の過去をたどる。
購入してページをめくっているうちに、いつの間にか物語の中に引き込まれ、あっという間に一気読みしてしまいました。ある人の過去をたどる中で謎が次第に明らかになっていくというパターンは、どこかで読んだことがあるありきたりのストーリーといえるかもしれません。しかしそこは真保さん、その筆力でぐいぐいと読ませられます。
押村がしだいに明らかにしていく姉の生き方は強烈です。これでは生きるのが辛くないかなあと思うような生き方です。人生平穏に生きることはできないでしょうね。そう生きざるをえない原因となった事実がラストに読者の前に明らかにされますが、あまりに重いものがあります。この事実自体も設定としてはありふれたものかもしれませんが、なんだつまらないと感じさせないのは、さすが真保さんです。巧いです。ただ、最後は納得できませんねぇ。これでは、本当にありふれた終わり方になってしまいます。慟哭できません。 |