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清涼院流水の本棚

  1. コズミック・ゼロ

コズミック・ゼロ 文春文庫
 初詣客でにぎわう日本冬地の神社から初詣客が集団で消失、さらには、各地の警察本部が何者かによって占拠され、首相公邸からは首相の姿も消える事件が起きる。その後も電車内の乗客消失事件が起きたりし、日本の人口は次第に少なくなっていく。
 最初はSF、それも宇宙人ものかなと思いましたが、ジャンルとしてはパニック・サスペンスです。毎日、人が千万単位でいなくなっていくなんて、SFでなければあり得ないと感じたのですが、それはラストでその種明かしがされても同じ、素直には納得いきませんでした。
 日本人全員を殺しても何とも思わない、ある目的のためならそれも当然と考える集団に、読んでいて嫌悪感を抱かざるをえません。だいたい、様々な特殊能力を有する者たちが集まることもあり得ないし、ある目的のために自己犠牲を躊躇わないということも信じられません(自爆テロを躊躇わない宗教みたい)。自分たちだけは逃げだそうとした者がいましたが、それが本当でしょう。こう言う僕みたいな読者がいることは清涼院さんは重々承知しているようで、そのあたりのところは今回の文庫本のあとがきに述べられていますし、解説の森博嗣さんは話のリアリティについて述べています。
 ただ、いろいろな疑問を持ちながらも、この先、どんな展開になるのだろうと、ページを繰る手が止まりません。いっき読みでした。ここは清涼院さんのリーダビリテイのなせるところでしょう。
 ラスト近くになって明かされるある人物の正体にはびっくりです。これは読めなかったですねえ。救いようのないラストには唖然です。
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