ラストのエピローグを除いて6編が収録された作品集です。どの作品も主人公は佐倉という大学生(時には彼に高瀬が加わります)。物語は彼らが遭遇した不思議な出来事が描かれます。
表題作である冒頭の「夜の床屋」は第4回ミステリーズ!新人賞を受賞した作品です。佐倉と高瀬が山道に迷い、やっとたどり着いた寂れた駅で夜を過ごすことになります。駅の前にある廃屋同然の床屋が真夜中営業しているのを見た佐倉たちは床屋を訪れるが・・・。真夜中に営業している床屋で二人が遭遇した出来事の裏側にある真実を、二人の話を聞いた新聞記者が明らかにするという話。これは、こういうことだからだと、理詰めに事実が明らかにされていきますが、理屈づけの中に破綻があると思うのは僕だけでしょうか。
次の「空飛ぶ絨毯」でも、人が眠っている部屋の中に敷かれていた絨毯が消えたという状況の種明かしを聞いて、そんなこと本当にできるのかなあと疑問を感じてしまいます。それに、作中に出てくる衛星携帯電話なんてそうそう持っている人はいないでしょう。ミステリというよりホラーぽい話です。
「ドッペルゲンガーを探しにいこう」は、アパートの大家の孫からドッペルゲンガー探しの手伝いを頼まれた佐倉を描きますが、ある目的のために、なぜ、そんなことまでする必要があったのか説得力がありません。
などと、不満を持ちながら次の「葡萄荘のミラージュT」から最後のエピソードまでの合わせて中編といっていいストーリーを読んだら唖然となってしまいました。日常の謎系の話だったはずが、なんとすべての話が関係のある幻想的な作品へと変貌してしまいました。でも、わざわざ前半3作を後半のストーリーに関連づけ、連作短編集のようにする必要があったのでしょうか・・・。 |