ネットでの好意的な書評を読んで、初めて佐藤さんの作品に挑戦してみました(既刊の「黄色い目の魚」は購入したまま積読本となっています。)。
短距離に青春をかける男子高校生たちの話です。主人公新二は中学時代はサッカー部に所属していたが、同じサッカーをする天才肌の兄と比較して、これ以上大成しないとサッカーを諦め、中学時代からその才能が注目されていた幼馴染みの連とともに陸上部に入部します。
サッカーの天才で、注目を浴びる兄を持ちながらも、ひねくれず、自分を見つめる新二のキャラクターが素晴らしいです。普通こんなできる兄と脳天気な母親を持てば、暗い性格の男になってしまいそうなものですが、しっかり陸上に打ち込む姿が描かれます。
そして、この新二のライバルが連。青春といえば友情です。この作品でも、なんでも一生懸命頑張る青春ど真ん中の新二と、才能に恵まれながらも努力を惜しむ連との友情が描かれます。対照的な二人だからこそ友情が長続きするのかもしれません。
また、いつもニヤニヤしながら二人を見守っている同級生の根岸くんや彼らの行動を理解する顧問の三輪先生など二人の周囲の人々も素敵な面々です。
現在高校生ならばもちろん、遙か昔に高校生時代を過ごした人にとっても、胸躍らせながら読むことができる作品です(高校時代帰宅部だった僕自身でさえ、楽しく読むことができたのですから)。主人公の青臭さが気に入らない人がいるかもしれません。青春しすぎだと思う人がいるかもしれません。しかし、その時代は多かれ少なかれ誰もが青臭いところを有していたはずですし、青春したいと思っていたはずですものね。
全3巻の予定で、今回は、高校1年生の秋までが描かれています。副題に「イチニツイテ」と書かれていますので、2はきっと「ヨーイ」でしょうね。この先、新二と連がどう成長していくのか楽しみです。 |