スウィングしなけりゃ意味がない ☆ | 角川書店 |
1939年のナチ政権下のドイツでエディが夢中になっているのは当時のナチスの世の中では退廃音楽と言われるスウィング・ジャズ。エディをはじめ、仲間たちの多くは裕福な家庭の子たち。彼らが馬鹿騒ぎできるのは、それぞれの家庭がナチスの恩恵を受けているということもあるが、そんな矛盾を抱えながらも彼らは空から蒔かれたイギリスの宣伝ビラを各戸に投げ入れ、スウィング・ジャズを聞き続ける。しかし、そんな彼らの元にも戦争の影が次第に忍び寄ってくる・・・。 ナチス・ドイツといえば規律正しい、四角四面、一糸乱れずといったイメージかありますが、それと自由な音楽を標榜するジャズとはまったく合わない気がしますが、作者の佐藤さんが巻末に書かれている「跛行の帝国」を読むと、ナチス政権獲得以前にはすでにジャズはドイツに浸透していたようです。 ドイツ人とスウィング・ジャズとはまったく正反対の位置にあるものと思っていたのですが、エディたちはスウィングに夢中になります。権威に反発するのは若者の特権ですが、ナチス・ドイツの世の中で、ナチに反骨精神を特つ者がいるとは、まったく想像ができません。でも、どんな国であっても、どんな時代であっても、権力に反発する若者の行動は変わらないようです。ドイツの敗戦にもかかわらず、ちょっと明るい未来を予想させるラストにホッとします。 各章の章題も内容にあった曲名から取られているのも洒落ています。オススメです。 |
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