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笹生陽子の本棚

  1. ぼくは悪党になりたい
  2. サンネンイチゴ

ぼくは悪党になりたい 角川書店
 今年度bP青春小説と書かれた帯に惹かれて購入してしまいました。自由奔放なシングルマザーの母親と腕白な異父弟の間で平々凡々な生活を送る高校生の主人公エイジ。母親が海外出張中、弟のヒロトが水疱瘡になった際に助っ人に頼んだ母親の友人と出会ったことから、炊事、洗濯をこなす自分に疑問を感じ始めてしまう主人公・・・。
 おもしろかったです。一気に読んでしまいました。とにかく主人公兎丸エイジがいいです。お人好しで、小心者で、それに少しおっちょこちょいときています。最後など“なんてだらしがないんだ”と思ってしまいますが、憎めない人柄なんですよね。それにしても、自由奔放という言葉では表しきれないほど自由に生きている母親から、こんな子どもが育つのも驚きです。いや、逆にそれだからこそ、こんな魅力的な高校生になったのかもしれません(母親はほとんど登場してきませんが、インパクト強いです)。
 主人公の友人の羊谷の人物造形も秀逸です。おたくゲームにはまって、まじめな高校生活を送るようになってしまうところには思わず笑ってしまいました。
 著者略歴によると笹生さんは児童文学出身のようですが、この作品は僕ら中年でも十分楽しめる作品です。僕にとっての今のところ本年度(2004年度)のベスト10に入る作品です。
 作品のなかで主人公にとって大きな位置を占める映画の「ギルバート・グレイプ」を1度見たくなってしまいました。
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サンネンイチゴ 理論社
 前作「ぼくは悪党になりたい」では、主人公が高校生でしたが、この作品の主人公は14歳の中学2年生の女の子。不器用で内気で自分から友達を作るというタイプではないけれど、理不尽なことは嫌いという子です。
 そんな主人公が、学校一の問題児とされている子と、ふとしたことから関わるようになったことから、成長していく過程を描いています。問題児というのは先生たちにとって扱いにくい子のことをいうのであって、本当は学校一の問題児とされるアサミもヅカちんもなかなか素敵な子供たちです。
 心の中ではおかしいと思いながらも、口には出せない主人公の心情が、ユーモアあふれるタッチで書かれており、思わず笑ってしまいました。とても読後感がいい作品です。
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