昨年の「このミス」で第2位にランクインした連作短編集です。
警察官による不祥事に端を発した警察組織の見直しにより、強行犯担当の刑事から地方の町の交番勤務へと異動(飛ばされた?)となった川久保。この連作集で描かれるのは、慣れない交番勤務の警官の職務を全うしようとする川久保の前に立ちはだかるのは、事なかれ主義の所轄署の刑事や田舎町の閉鎖性です。
交番のお巡りさんといえば、田舎ではいわゆる有力者の一人です。町の行事には必ず町村長さんと肩を並べて出席しますよね。そんな地域が望むのは、地域から犯罪者を出さないで、なあなあで済ませてもらいたいということ。こうした本人の意識と周囲とのズレがこの連作集の根底に流れています。
第1話の「逸脱」は、駐在所勤務となった主人公川久保の初めての事件です。男子高校生が一晩家に帰らないという単純な事件と思ったところ、翌日に遺体となって発見されます。遺体に残された不自然な痕跡から事件性を感じ、所轄の刑事に進言する川久保の言葉は無視され、所轄の交通係は交通事故として処理します。ラストで語られる事実は、ストレートに描いてはいませんが、衝撃的です。この作品集の中では一番印象的な作品といえます。
最後の「仮装祭」は、この作品集の中では中編ともいっていい長さの作品です。この作品では、13年前に町で起きた少女誘拐事件の真実が明らかにされるとともに、「犯罪発生率、管内最低」の健全な田舎町の隠された姿が明らかとなります。
駐在所のお巡りさんにそこまでできるかと思いもしますが、そこは元強行犯刑事だったという設定が生きてくるのでしょう。なかなか読み応えのある作品でした。 |