初めて読んだ桜木さんの作品です。
表題作を初めとする6編が収録されている短編集です。新米の女性新聞記者を主人公とする作品が2話収録されていますが、それ以外はまったく単独の作品です。舞台となるのはすべて桜木さんがお住まいになっている北海道です。どの作品もどんよりと曇った空を思わせる暗い雰囲気の話ばかりです。
別れた男が死んだという知らせで北海道に向かった女性を描く「かたちないもの」、新米の女性新聞記者が港で会った釣り人が海で転落死、彼には殺人の過去があった「海鳥の行方」、覚醒剤使用で逮捕された女性の国選弁護を引き受けた初老の弁護士が、彼女の人生を知る中で自身の過去を振り返る表題作の「起終点駅」、子どもの頃母と自分を捨てて失踪した父と廃品置き場で再会する「スクラップ・ロード」、死んだら自分のことを記事にしていいといった女性歌人の取材をする女性新聞記者が歌人と同居していた男と会う「たたかいにやぶれて咲けよ」、弟が罪を犯したことから故郷を捨てた女性が30年ぶりに海辺の村に帰って、ただ一人自分を気遣ってくれた老女と会う「潮風の家」
中でも印象的だったのはどちらもこの作品集の中では主人公が男性というせいもあるでしょうか、「起終点駅」と「スクラップ・ロード]です。主人公は、年齢的には初老の男性とまだ若い男性という違いはありますが、二人ともラストは過去は過去として踏ん切り、これからも生きていくことを選択します。辛いですが、グッときます。
作者によると「無縁]がテーマだそうです。どの作品も主人公は孤独を抱える人ばかりで、出会う人も孤独を抱える人という、「無縁」がテーマらしい設定です。しかし、主人公たちは孤独に押しつぶされず、生き続けます。 |