公安シリーズというか百舌シリーズ第1弾。能登半島の岬で発見された記憶喪失の男は妹と名乗る女によって、兄の新谷と確認される。一方新宿では過激は集団による爆弾事件が発生、公安の倉木警部の妻が巻き添えとなり死亡する。仕掛けが盛りだくさんで、非常に錯綜しており、読みほぐすのに努力を要する。しかしながら、それを差し引いても面白さは損なわれない。やはり、これがシリーズ最高作だと僕は思う。
(再読感想) 公安警察を描く作品としては「裏切りの日日」に続く第2弾ですが、百舌と呼ばれる暗殺者の初登場や倉木、大杉たちシリーズキャラの登場ということでは“百舌シリーズ”第1弾といっていい作品です。
あとがきで作者自身が言っているように各章の番号のある位置に注意です。この番号の位置によって時制が異なっており、注意して読んでいかないと逢坂さんの仕掛けに引っかかることになります。前回読んだときには、すっかり逢坂さんに騙されましたが、今回20年ぶりの再読で、その仕掛けをわかっていながらも、おもしろさは全然変わりません。
過激派による爆弾の誤爆に巻き込まれて死亡した公安刑事の妻というストーリーの発端から物語の中にどんどん引き込まれていきます。百舌と呼ばれる暗殺者の正体は何者なのか、時制が行ったり来たりする中でものの見事に騙されますし、事件の全貌が明らかになったときには、まったく考えられなかった展開に唖然としてしまいます。
倉木という感情を顕わにしない、冷たいと表現せざるを得ない公安刑事や、美貌の公安刑事の明星美希、典型的な叩き上げの融通の利かない刑事の大杉、そして倉木以上に何を考えているかわからない津城など強烈な個性を持った人物たちの登場もこの作品をおもしろくする一因となっています。 |