僕にとって初めての乙一作品です。猟奇的な殺人に興味を持つ主人公「僕」とそのクラスメートの森野夜(夜という名前もすごい)を描く6編からなる連作短編集です。女性をバラバラに解体して飾り立てる犯人、手首を切断して収集する犯人、人間を棺桶に入れて生き埋めにする犯人など、猟奇的な犯人が登場してきますが、彼らよりも、よほど二人の方がはるかに異様です。特に表面的にはクラスメートと話を合わせる「僕」より、全く他を拒絶している森野という女子高校生が、美貌ということもあり恐ろしさを感じさせます。この二人の関係がまた、奇妙です。表題作でもある「リストカット事件」を読むとその関係の異様さがわかります。
不思議な雰囲気の作品集ですが、ミステリの味も十分に楽しめました。「犬」は、なにかおかしいなあと思いながら読んでいましたが、最後にそうきたかという作品です。そのほか「記憶」にしても「声」にしても、最後にアッと言わされる作品となっています。それから、カバーの裏には思わぬ秘密が施されています。僕も人から教えてもらわなければ気づきませんでした。
GOTHというのは、ゴシック小説のGOTHICから派生した言葉で、人間がもつ暗黒面に強く心を惹かれる者を指すそうです。 |