久しぶりに折原さんの作品を読みました。折原さんといえば叙述トリックですから素直に文章を読むわけにはいきません。きっとどこかに読者をひっかける罠が仕掛けられているのだろうと思いながら読み進みました。最初から怪しげな幕開けです。
今回折原さんが材料として取り上げたのはポストカプセル。折原さんの話では1985年につくば万博が開催されたときに「ポストカプセル郵便」という企画があり、そのポストに投函すると、21世紀の最初の日に指定された宛先に届くというものだったそうです。この作品ではそれと同様に、15年後にラブレターや遺書や脅迫状などが届くことから起こる騒動が描かれていきます。
いったいなぜ“ポストカプセル”に入れたはずのない手紙が15年後に届いたのか。そしてどの話にも最後に編集者を名乗る人物がひとこと述べており、果たしてこの“編集者”とは誰なのか。この“編集者”はこの物語で語られる事件にどう関わっているのかなど様々な謎が読者の前に提示されます。
15年前に届けられるはずだった手紙が今さら届いても、「再会」のようにラブレターでは戸惑うばかりでしょうし、「受賞作なし」のように文学賞の受賞連絡では怒りを覚えるだけで、受け取った人が幸福になるものではありません。それはその手紙を書いた人も同じです。それゆえ、15年後に手紙を届ける犯人の意図がまったく理解できません。犯人はその理由を××(ネタバレになるので伏せます・)と述べていますが、その理由であるなら、どうしてこんな行動をとるのか、はっきり言って支離滅裂です。最後はところどころに貼られた伏線が回収されて、なるほどとは思ったのですが、この犯人の動機には呆れかえるばかりです。 |