7編からなる連作短編集です。
奇談を求めているという新聞広告に誘われて、あるパーにやってくる男女がそれぞれ自分の身に降りかかった不思議な話をします。それを聞くのは、恵美酒(えびす)という名前のでっぷりとした、もじゃもじゃ頭、丸縁眼鏡にちょび髭の男。そして、恵美酒に仕える女性か男性かわからない外見の氷坂。
持ち込まれる話は、自分の影にナイフで刺された話、古い姿見の中に現れる武家の姫君の話、パリで出会った運命を予見できる魔術師の話、目の前で連続殺人犯が消え、その代わりに残された死体の話、冬でもパラが咲き誇る豪邸の主人から一緒に住もうと誘われた話、邪眼の持ち主と一晩を過ごした少年の話です。どの話も、客が語った奇談を恵美酒が聞いて満足するが、それを氷坂が違う角度から論じて、奇談ではないと明らかにするパターンで進みます。
単なるそれだけの話かと思うと、ラストの「すべては奇談のために」で、作者は連作短編集らしい更なるどんでん返しを見せてくれます。恵美酒と氷坂の正体は明かされないままです。続編を期待したいですね。 |