第23回吉川英治文学新人賞受賞作品です。
物語は、主人公の元に学生時代の恋人由希子から19年ぶりに電話がかかってくることから始まります。自分では何も決められない主人公とそんな彼に代わって、てきぱきと決断をしてきた由希子。そんな二人の出会いから別れまでの過去と現在が交互に描かれていきます。とても静かな雰囲気のラブストーリーです。
独身で20歳も年の離れた恋人がいて、熱帯魚と犬を飼っている40男は、そうそういないだろうなあと思いながらも、主人公が同世代であるという興味に加え、読みやすい文章ということもあって、一気に読み終えてしまいました。
「人は一度巡り会った人と二度と別れることはできない。」という主人公のことばには納得させられます。忘れたようでいても、心の奥底には記憶は残っていて、いつかふと浮かび上がってくるというのは本当ですね。
それにしても、最後の4ページは必要なかったのではないでしょうか。終わったと思って次のページをめくったら、まだ話が続いていたのでちょっとびっくりしました。その前で終わった方が余韻が残ったのですが・・・。 |