小説推理新人賞を受賞した「ツール&ストール」をはじめとする、お人好しの主人公白戸修が活躍(?)する短編集。
お人好しであるが故に、殺人容疑をかけられた友人が飛び込んできたり、怪我をした友人の代わりに怪しげなアルバイトに行ったり、間違い電話なのに指定された場所に行ったりして、結局様々な事件に巻き込まれてしまう主人公。しかし、こんな不運に巻き込まれながらも、ときに事件を解決してしまったりする。なかなか魅力的なキャラクターであり、この小説のおもしろさは謎解きよりもこの主人公の魅力に負うところが多い。
5作の短編は、どれも、この主人公の魅力がいかんなく描かれているが、僕としては、主人公が名探偵ぶりを発揮する「サインペインター」がおもしろかった。とにかく、この主人公で、ぜひ、続編を期待したい。
※ 「セイフティーゾーン」で何も持っていない人の手にいつの間にか武器(?)が握られているというのは、「ダイ・ハード」からの着想かな。
※ 「ショップリフター」の冒頭、裾上げの長さを間違えられ、膝下10センチのズボンを試着したところ、店員が笑いをこらえきれず吹き出したという話で始まっているが、僕にも同じことがあった。コートの袖の長さを調整してもらったところ、ヒジまでしかなくて、やっぱり店員が笑いをこらえきれずに吹き出した。全く「笑っている場合じゃないですけど」だよ。 |