(ちょっとネタばれ)
小野不由美さんの十二国記シリーズが順次新潮文庫で刊行されます。この作品はシリーズの序章ともいうべき作品です。
僕自身はその人気だけは聞いていた十二国記シリーズですが、異世界の話というファンタジー色が強そうな設定に、今まで手が仲びませんでした。今回、初めて読んでみましたが、これが予想外に(といっては失礼ですが)、おもしろい。物語の舞台が異世界ではなく現実世界だったのも物語に入り込みやすかったと思いますが、ページを繰る手が止まらず、いっき読みでした。
教育実習生として母校に行くことになった広瀬が主人公。彼が受け持つクラスに高里という、他の生徒とは纏っている空気が違う生徒がいるのに気づく。彼は幼い頃、神隠しにあって1年ほどしてから突然戻ってきたという過去を持っていた。そんな彼には、いじめ等ちょっかいを出した者が悲惨な事故に遭うという噂があった。広瀬が教育実習を始めてからも、高里に余計なことをした者が怪我をしたりしたが、その報復とも思える行為は次第にエスカレートしていき、凄惨な事態を引き起こしていく。
十二国記シリーズを読んだことのない僕にとっては、高里を守る異形のものの存在や“たいき”という“もの”を探す女性が何なのかわからず読み進んだのですが、知らなくてもおもしろさが損なわれることはありません。シリーズ本編を読まなくてはという期待感を抱かせます。シリーズ導入編としては大成功の作品です。高里を守るもののために、現実世界では彼の居場所はなくなってしまいましたが、果たして、本編の中には彼は登場してくるのでしょうか。 |