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岡崎琢磨の本棚

  1. 夏を取り戻す

夏を取り戻す  ☆  東京創元社 
 S県城野原市にある城野原団地に住む子どもたちの失踪事件が連続する。子どもたちは何日かすると戻ってきたが、何者かによって誘拐されていたという。警察では子どもたちのいたずらではないかと取り合わないので、貴誌の力を借りたいと、ゴシップ誌である「月間ウラガワ」編集部にFAXで匿名の情報提供がある。それを見たフリーの記者である佐々木大悟は取材をしようとするが、編集長は入社したばかりの猿渡守に佐々木のお目付け役を命ずる。城野原団地に向かった佐々木と猿渡は自分が情報提供者だという女子大生の安田広子と会い、彼女の案内で失踪して帰ってきた子どもたちに事情を聞いて回るが・・・。
 子どもたちと佐々木、猿渡との知恵比べが始まります。失踪のトリック自体は「こういうことだな」と読む中で謎解きはできるのですが、その失踪事件の裏に隠された子どもたちの思いは何だったのかが、この物語の肝心な部分です。
 次第に明らかになっていく子どもたちの思い、そしてその中に更に隠された一人の子の苦しい思いに、読んでいて心を揺さぶられます。真実が明らかとなったと思ったあとに、そうではなくて実はという部分が付け加えられているのは、作者の優しさゆえでしょうか。
 エピローグで子どもたちが成長した2016年の様子が語られますが、最後は胸を熱くさせてくれます。
 ちなみにこの作品は東京創元社「ミステリ・フロンティア」の100冊目だそうです(1冊目は伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」です。)。 
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