クラインの壺 |
新潮文庫 |
岡島二人のコンビとしての最後の作品。果たして自分が今いる世界が現実なのか、はたまた機械が作り出した仮想の世界なのか。映画の「マトリックス」が人気を集めているが、「マトリックス」より遥か以前に仮想現実を題材とした岡島の着想はすごいと思う。NHKでドラマ化されたが、このおもしろさはテレビでは十分描かれなかった。というか描くことができなかったのだろう。岡島作品の中で僕が最も気に入っている作品。 |
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そして扉が閉ざされた |
講談社文庫 |
気がつくと見知らぬ地下室に閉じ込められていた。ドアは閉じられ、開けることができない。なんとそこは核シェルターの中だった。閉じこめられたのは4人、4人とも3ヶ月前に事故で死亡した友人の咲子の母親に呼び出され、気がついたときは核シェルターの中だった。
なぜ彼らは閉じ込められたのか、咲子の死は事故ではなかったのか。核シェルターの中で4人が事故の夜を回想しながら咲子の死の真相を推理していく。
物語が核シェルターの中だけという、言ってみれば非常に地味な設定であるが、逆にその密閉された核シェルターという設定が緊迫感を増している。安楽椅子探偵ものというわけではないが、4人の回想と告白から事件の真相を見つけるという頭を使う作品である。
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99%の誘拐 |
徳間文庫 |
どの書評を読んでも、おもしろいと書いてあるとおり、「クラインの壺」、「そして扉が閉ざされた」と並ぶ岡島さんの代表作です。
昭和43年、イコマ電子工業の社長生駒洋一郎の息子慎吾が誘拐されます。身代金として支払った金は社長が傾いた会社を建て直すため、新工場の建設資金として用意したものでした。無事、息子は帰ってきますが、その代わりにイコマ電子工業はカメラメーカーのリカードへと吸収されることとなってしまいます。それから20年、再び誘拐事件が起きます。誘拐されたのはリカードの社長の孫。そして身代金の運搬役に指名されたのは、20年前に誘拐され、現在はリカードの研究員となっている生駒慎吾でした。
この作品の発表は1988年ですが、まだコンピューターが今のように一般に行き渡っていない時代に、ネットワークのゲームを使った誘拐方法が非常に斬新でした。また、コンピューターを使用した家族との間の連絡方法や身代金受け渡しの方法が、正直読んだ当時は、作品中に登場する警察官と同じような知識しかなくて、「へぇ〜そんなものなの」と思うだけだったのですが、あれから15年近くが経過し、自分自身のパソコンの知識も少しは増えたなかで再読すると、今でもこの方法は使えるのではないのかなあと思うほどのアイデアです。全然古く感じられません。それにしても、あの当時の岡島さんの知識に15年かかって、ようやく追いついたということでしょうか(^^; |
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チョコレートゲーム |
双葉文庫 |
息子が学校を休んだり、早退しているとの学校からの連絡で、息子の部屋に入ると、息子の小遣いでは買えないと思われるパソコン等があります。そして、息子の体には無数のアザが・・・。そんな矢先、息子の同級生が殺され、息子は不審な行動をします。さらに第二の殺人事件が起き、息子は容疑者と目され、やがて自殺をしてしまいます。ここから息子の容疑を晴らすため、主人公の闘いが始りまする。クラスメートの口からふとこぼれたチョコレートゲームとはいったい何なのか。
親と子、特に父と息子となれば、子供が成長していくに従い、なかなか腹を割った話というのはしにくくなるものです。自分自身もそうでしたが、親をうっとおしいと思う時期も確かにあります。でも、それが成長の過程なのではないでしょうか。素直に反抗期もなく大きくなっていく子供の方がおかしいのではないかと思います。この作品はそんな時期にさしかかった子供との関わりをあまり持たなかった作家の父親が、子供の死後、真実を求めて事件の謎を追っていく話です。死んだあとでしか、息子を知ることができなかった主人公が哀れです。
第39回日本推理作家協会賞長編賞を受賞しています。 |
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