同居していた恋人にすべてを持って逃げられると同時に声も失い、着の身着のままで故郷の村に戻ってきた倫子。彼女は、村で一日に一組の客しかとらないレストランを始めます。名前は「食堂かたつむり」。彼女の作った料理を食ベると恋や願い事が叶うという噂が流れ、順調にレストランは続きますが・・・。
いい人ばかりが登場し(悪い人物は、最後まで登場しない逃げた恋人と、彼女を妬んで料理に陰毛を入れた男の2人だけです。)、読んでいてほっとします。そして、彼女の料理を食べる人々のストーリーもほのぼのとしていいです(なかでも、お妾さんの話は素敵です。)。
後半は、倫子と母の親子の話が中心になってきます。なかなか理解し合えなかった倫子と母ですが、母が倫子に残した手紙にはじ~んときてしまいました。ただ、母の死に際には声が戻るのではないかと思いましたが、そこは小川さんに裏切られました。話の流れでは、それでハッピーエンドかと思ったのですが。
料理にはとんと興味がない僕にとっては、読んでいても倫子が作る料理をなかなか頭の中で形作ることが難しかったのですが、料理好きの人には料理の場面を読むだけでも楽しむことができるかもしれません。なにせ「食堂かたつむり」に出てくる料理のレシピ本まで出版されるくらいですから。 |