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二階堂黎人の本棚

  1. 悪魔のラビリンス
  2. クロノ・モザイク

悪魔のラビリンス 講談社文庫
 名探偵二階堂蘭子シリーズです。蘭子があの人狼城殺人事件でヨーロッパに発つまでの間の“魔王ラビリンス”との闘いを描いた第1弾です。走行中の寝台特急での人間喪失と密室殺人を描いた「寝台特急〈あさかぜ〉の神秘」とやはり密室殺人を描いた「ガラスの家の秘密」の二つの事件から構成されます。
 密室殺人とか人間消失とかミステリとしての謎解きの要素はもちろんありますが、それより重きをなしているのは、名探偵と希代の殺人鬼との闘いでしょうか。本作品のなかにも江戸川乱歩の作品のことが出てきますが、まさしく明智小五郎と怪人二十面相との闘いのような江戸川乱歩作品の雰囲気を漂わせた作品です。自らが犯罪を犯すばかりでなく、人を言葉巧に悪の道に誘い込む“魔王ラビリンス”とは何者なのか、今後の展開が気になります。
 現代で名探偵と殺人鬼との闘いを描くとなると、どうもしっくり来ない気がしますが、舞台が昭和40年代ということが、違和感をなくさせているのでしょうか。
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クロノ・モザイク 文藝春秋
 上条友介は中学2年生。ある日突然、5年後の未来にタイムトラベルしてしまった友介は、その世界で自分の恋人である菱村美沙緒が殺されることを知る。彼は、現在と未来を行き来しながら、それを阻止しようと奔走するが・・・。
 大好きなタイムトラベルものということで、図書館に入ると同時にすぐに借りてきました。タイムトラベルといっても、この作品では精神だけが未来の自分の中に入っていき、未来の自分の精神はその間過去の自分の中に入るというもの(こういうタイムトラベルはどこかにあったでしょうか。)。
 物語は、時間を行ったり来たりする中で、有介が美沙緒の死を防ぐことができるのかを中心に、幼馴染みの同級生・祥子との恋も交えながら進んでいきます。ミステリー作家の二階堂さんの作品なので、犯人は誰なのかという謎解きへの興味もありましたが、殺人事件の被害者の関連性が明らかになったところで、こんなことが被害者となる理由になるのかと唖然としてしまいました。また、その犯行動機もいささか理解しがたいです。
 ぞもそものタイムトラベルの原因に何か変なものの関与があり、さらには殺人現場に現れた未知の生物と戦うといった具合にとんでもない展開となり、ストレートなタイムトラベルものとは前半から趣を異にしました。まるでB級SF映画みたいな雰囲気で物語が進みます。
 しかし、ラストがこんな結末となるとは。いや、結末はこれで良かったのでしょうが、タイムトラベルならぬ○□とは・・・。やっぱりB級SF映画です。正直のところ期待外れでした。
 殺人事件の謎解きをする“風来坊”は、二階堂作品でおなじみのあの人。二階堂ファンヘのサービスでしょうか。
 作中には、NHKで放映していた外国ドラマ「タイムトンネル」やアニメの「スーパージェッター」、さらに亡き広瀬正さんの傑作タイムトラベル小説「マイナスゼロ」、タイムトラベル映画の「ある日どこかで」などの記述が出てきて、その年代に生きてきた僕としては非常に懐かしい思いを感じることができました。
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