名探偵二階堂蘭子シリーズです。蘭子があの人狼城殺人事件でヨーロッパに発つまでの間の“魔王ラビリンス”との闘いを描いた第1弾です。走行中の寝台特急での人間喪失と密室殺人を描いた「寝台特急〈あさかぜ〉の神秘」とやはり密室殺人を描いた「ガラスの家の秘密」の二つの事件から構成されます。
密室殺人とか人間消失とかミステリとしての謎解きの要素はもちろんありますが、それより重きをなしているのは、名探偵と希代の殺人鬼との闘いでしょうか。本作品のなかにも江戸川乱歩の作品のことが出てきますが、まさしく明智小五郎と怪人二十面相との闘いのような江戸川乱歩作品の雰囲気を漂わせた作品です。自らが犯罪を犯すばかりでなく、人を言葉巧に悪の道に誘い込む“魔王ラビリンス”とは何者なのか、今後の展開が気になります。
現代で名探偵と殺人鬼との闘いを描くとなると、どうもしっくり来ない気がしますが、舞台が昭和40年代ということが、違和感をなくさせているのでしょうか。 |