テレビの本の紹介コーナーで紹介されていたのを見て読んでみました。
物語は200ページほどの短い話です。3年の交際期間を経て、結婚生活の練習と称して一緒に暮らし始めた藤井と佳美。幸せな生活を始めた二人でしたが、佳美が病魔に襲われます。話の筋としては典型的なお涙ちょうだいの昼メロドラマのパターンでしょうか。
しかし、中村さんは、二人のラブストーリーを淡々と丁寧に描いていきます。実家で死にそうな犬の話から、オートバイの音が好きなその犬のために動かなくなっていたオートバイを二人で分解修理する話、そのオートバイで実家に戻って愛犬が命を取り留める話、そしてプロポーズから彼女の病気の話と、その語り口は本当に静かです。佳美が病魔に倒れたのちの生きる努力をする二人の姿も、同じように静かなタッチで描いており、その淡々とした静かな書き方が逆に深い悲しみをもたらしています。
僕はキリスト教徒ではないのですが、彼女が一緒に住むために藤井の部屋にやってきた日にスケッチブックに書いた教会での結婚式にお決まりの誓いの言葉、改めていい言葉だと思います。
先月文庫化された文藝賞受賞作「リレキショ」の登場人物が、この作品にも出ているそうです。「リレキショ」も読んでみなくては。 |