アイミタガイ | 幻冬舎 |
昨年、黒木華さん主演で映画化された作品です。とても素敵な映画だったので、原作を読みたくなりました。5話が収録された短編集です。それぞれに緩いつながりのある作品集になっています。 いつも自分と同じ時間に同じ車両に乗る男。ある日、男が降りる駅を眠っていて乗り過ごしそうになった際に、彼は文庫本を落として目覚めさせる(「定刻の王」)。 合格すると思っていた中学受験に不合格となった樋口くん。自分より劣ると思っていた明石くんも合格し、ショックを受ける(「ハートブレイク・ライダー」)。 子どもが中学生になったのを機に有益な形で社会復帰したいとホームヘルパーになった稲垣範子。よかれと思ってやったことが訪問先からの苦情を受け、落ち込む中、新たに一人暮らしの老婆の家に入るが・・・(「幸福の実」)。 海外で事故死したカメラマンをしていた娘宛てに児童養護施設からカードが届いたことから、両親はその理由を尋ねる(「夏の終わり」)。 父の浮気で離婚した両親の父方の祖母の家に遊びに行った穐村梓は、その家で母親の違う弟と出会う(「蔓草」)。 映画では各エピソードの登場人物たちに何らかの繋がりがある群像劇として描かれました。黒木華さん演じる式場のウェディングプランナーである梓を主人公に、「夏の終わり」の亡くなった娘が梓の友人、その娘の父親が「定刻の王」で電車を乗り過ごしそうになった男、その男に文庫本を落としたのが梓の恋人、「幸福の実」で老婆を紹介したヘルパーが梓の叔母、老婆は梓が中学生の頃心を癒してくれたピアノの弾き手といった具合に、物語とは名前が異なったり、物語にはない設定が加わったりしていますね。収録されている5話からは、「ハートブレイク・ライダー」は映画に使用されていませんでした。 題名の「アイミタガイ」は「蔓草」の中で説明されています。「この世は持ちつ持たれつ、お互いさま」と説明されますが、今の世の中、みんながそんな気持ちを持ってくれればいいけど。 |
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