以前交際していた男性が結婚すると聞いたときから、原因不明のふるえに襲われた主人公川波みのり。病院をはしごするが、一向に快方に向かわず、 そんなとき、ふと思い立って行ったのが、昔一度だけ行ったことのある漢方診療所。そこにいたのが、若くて笑顔の素敵なイケメン漢方医で、みのりはその漢方医に惹かれて通院を始めます。
31歳で独身、もちろん子なしで、今年のはやりのことばで言うと、典型的な「負け犬」です。しかし、 みのりのキャラクターが愉快で、本人は真剣に悩んでいるのだろうけど、とってもそうは思えない、「負け犬」なんて言葉とは縁のない女性という感じです。また、みのりの周りの登場人物たちもなかなかのキャラクターで、物語を引き立てます。特にバツイチ、40歳に手が届こうかという志保さんという人はユニークです。皆から敬遠されている離婚経験のある男と交際するのですが、その理由が「え!そんな理由なの」と驚いてしまいます。
第28回すばる文学賞受賞作で、第132回芥川賞候補作(残念ながら受賞は逸しましたが)です。漢方の知識を交えながらユーモアにあふれた文章で、一気に読んでしまいました。 |