初めて読んだ中島京子さんの作品です。印象をひとことで言えば不思議な小説です。
1989年にある旅行会社が企画した香港ツアーで一人だけ旅の途中で姿を消した青年がいた。15年後、一人の女性の元に、行方不明となった青年が15年前に書いたという手紙が届くが、彼女にはその青年の心当たりがない。また、ツアーに参加した男性は引っ越しの最中にツアーのことを書いた日記を発見し、読み始める。一方ツアーで添乗員をしていた女性は、当時の自分の行動が書かれたようなブログを発見する。
3人の男女がそれぞれ、手紙、日記、ブログを見て、姿を消した青年のことを思い出そうとするが、記憶がはっきりしません。果たして彼は存在したのか、存在したのなら彼はどうなったのか。
「記憶はときどき嘘をつく。香港旅行の途上で消えた青年は何処へ」と書かれた本の帯に、ミステリっぽい匂いを感じて読み始めましたが、不思議なストーリーに引き込まれました。こうした記憶の不確かさというのは経験がありますよね。最後の章では最初に女性に手紙を届けたフリーライターが青年の足跡を辿る様子が描かれますが、ラストまできても、結局この青年は何だったのかわかりませんでした。この小説はいったい何なんだったのだろうという思いが強く残った作品でした。最初はおもしろかったのですが・・・。 |