▲トップへ   ▲MY本棚へ

中島博行の本棚

  1. 検察特捜 レディライオン

検察特捜 レディライオン  講談社 
 横浜港のふ頭で麻薬取引がなされるという情報を掴んだ厚生労働省厚生局麻薬取締部の麻薬Gメンたちは現場に踏み込むが、突然現れた者たちによって見張りに立っていた一人を残して麻薬取引者たち共々短機関銃で殺害される事件が発生する。北朝鮮との間で貿易をしている会社の外為法違反を調査していた東京地検特捜部の検事・岩崎紀美子は、その会社の船が事件現場近くに停泊していたことから、事件との関わりを疑い捜査を始める。そんな岩崎に政府の国家安全保障局(NSS)へ参加することとなった副部長の新堂は、ともにNSSの会議に出席することを命じる・・・。
 1994年第40回江戸川乱歩賞を受賞した「検察捜査」に登場した検察官・岩崎紀美子を主人公とする作品です。現在、東京地検特捜部に配属されている岩崎は、結婚し一人娘を設けたが、結婚した途端、理不尽なエゴイストとなった夫に愛想をつかして離婚し、今はシングルマザーという設定です。「検察捜査」刊行当時、購入して読んだはずですがもう30年近くが過ぎますから、内容はすっかり忘れていました。もちろん、主人公の岩崎という女性検事のキャラも覚えていませんでした。検事といえば警察から送致されてきた容疑者を起訴するだけで、自ら捜査するという印象はないのですが、この岩崎という検事は自らの足で捜査します。また、上司から叱責されてもまったく動じないという、あまりにカッコよすぎです。
 警察や検察だけでなく、自衛隊や公安調査庁も巻き込んでの大きな事件が描かれていきます。事件の裏で糸を引く男が早い段階で登場しますが、果たしてこの男は何者なのかがミステリとしての謎解きになります。まあ、この点は読んでいるうちに途中で想像できてしまうのですが。やはり、この作品の面白さは、そうした謎解きの部分より岩崎検事の強烈なキャラにあります。今後の再登場を期待したいです。 
 リストへ