長嶋さんの初めての長編小説です。
妻と別れながらもいまだに付き合いを持っているゲームデザイナーの向井七郎。「なべてこの世はラブとジョブ」を座右の銘とする大学時代からの友人津田。物語は、現在、2年前など、時間を行きつ戻りつしながら、主人公向井と津田、向井の離婚した妻、そして津田の付き合う女性たちとの関わりを描いていきます。
向井は、僕から言わせればあまりに優柔不断な男です。妻に恋人ができて結婚生活が破綻しながら(ここのところは、女性側から言わせれば、そもそも仕事を勝手に辞めてしまう主人公の方に原因があると言われるかもしれません)、離婚した後も元妻と付き合っているなんて、妻が浮気したことに怒ったのにおかしいだろうとひとこと言いたくなってしまいます。一方元妻もおかしいです。新しい恋人がいるのに、向井にメールを送ってきたり、部屋を訪ねてきたりするのですから。この二人の関係はよくわかりません。離婚したあとも友人同士でいられるなんて、ほとんど不可能ではないのでしょうかねえ。浮気した妻に怒って離婚することになったのだから、憎むというのが本当ではないのでしょうか。優しすぎる男です。やっぱりわかりません。
こうした、ちょっと変な夫婦(元夫婦か)関係のほか、複数の女性をパラで走らせている(同時並行で付き合う)と公言する女性からすればとんでもない男、津田との友情や主人公と津田の周囲の女性との恋愛を流れるような文章、リズム感溢れる会話で描いており、面白く読み進めることができます。おすすめです。
題名の「パラレル」とは、「パラで走らせている」から来ているのかなと思ったのですが、作者の話ではいろいろな意味を持っているようですね。
文学界に掲載されたときとは結末が違うそうですが、文学界の結末はどうなっているのでしょうか。 |