夕暮れ密室 | 角川書店 |
(ちょっとネタバレ) 2003年の23回の横溝正史賞候補作で、受賞はならなかったものの今回12年がたっての書籍化です。審査委員だった北村薫さんや綾辻行人さんのオビに書かれた推薦文句に惹かれて読んでみました。コテコテの青春ミステリーです。 春のインターハイ予選も終了し、クラブ活動をしていた高校3年生も受験へと心が向かう中、学園祭の準備で慌ただしい日が続くある日、校内の窓、扉とも閉まった状態のシャワ一室の中で胸に錐を突き立てられた女生徒の死体が発見される。被害者の女生徒はバレー部のマネージャーだった森下栞。多くの男生徒から好意を寄せられていた彼女の死に対し、同級生たちは真相を究明しようとする。 栞を取り巻く高校生たちによって事件が語られていきますが、警察の姿がまったく見えてきません。登場するのは、事件現場で発見者たちに事情を聞く駐在の警官のみ。通常、不審死だから県警本部から刑事がやってくるでしょう。なのに、発見者たちに事情を聞くのが駐在の警官とは、ありえません。更なる殺人事件が起きても警察の登場はなく、事件現場を高校生たちが自由に調べ回るのですから、いくら青春ミステリーとはいえ、あまりに現実的ではありません。 また、死因についても、扼殺であったのか錐による刺殺であったのかは警察の検証ですぐわかるはずです。警察の捜査が進んでいないという状況はあり得ません。 犯人の動機もあまりにお粗末。高校生なりの嫉妬の気持ちもあったでしょうけど、こんなことで人を殺してしまうものでしょうか。説得力がありません。それに、生きている人と違って、死体を動かすのは大変だといいます。2番目の被害者は事件現場から移動して橋から川に落とされますが、車を運転できない高校生が死体を移動させるのは相当な困難を伴うもので、それだけで犯人が推察できてしまいます。 密室の謎は納得のいくものでしたが(経験はありませんが、娘の住んでいたマンションの管理会社の人から十分注意するよう説明されたことかあります。)、それ以外の部分で上述のように「あれっ?」と思うこともあって、好きな青春ミステリーでしたが、評価はいまひとつです。 |
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