ベストセラーとなった「13歳のハローフーク」は、職業ガイド本でしたが、続編を思わせるタイトルの付いたこの作品は、初老期を前にした5人の男女の生き方を描いた5編からなる中編小説集です。
5編の主人公は、定年後の夫の姿に幻滅し、熟年離婚をして婚活にいそしむ元主婦、リストラされ、ホームレスになることを恐れる男、早期退職して妻との悠々自適の旅生活を夢見たが、妻の賛同が得られず再就職活動を始める元営業マン、子どもが家を出て行き、ペットの犬を生きがいとする主婦、読書に目覚め古本屋通いをする中で出会った女性に恋する元トラック運転手です。
どの話も最後は主人公は前向きな気持ちで終了しますが、これは村上龍さんの50代へのエールが多分に含まれているのでしょう。僕としては、同年代としてこれらの話を読むと、やはり辛い気持ちになってしまいます。人生の折り返し点をとっくに過ぎたのに、経済的な不安も抱えているし、これからの人生設計など立てることもできないという現状を、いやがうえにも認識してしまいますから。
冒頭の「結婚相談所」では、主人公の夫に自分の姿を重ねてしまいます。定年で会社という看板をなくし、人間関係も会社中心であったが故に、会社を辞めると人との付き合いもなくなってしまうという状況は未来の(それも直ぐ先の)自分を見ているようです。妻に愛想を尽かされるのも無理はない気がします。
ただ、寿命が伸びた今、50代はまだまだ枯れる歳でもありません。ラストの「トラベルヘルパー」の主人公が、この年齢になって一人の女性に惹かれる気持ちもよくわかります。
この作品の主人公にしろ脇役にしろ、女性の登場人物はみんな強いです。男というのは、だらしないですね。
果たして僕自身は、この小説の主人公たちのように前向きで生きていくことができるのか、その時はすぐ目前に来ています。 |