森家の討ち入り ☆ | 講談社 |
忠臣蔵といえば、主君の無念を晴らした赤穂浪士のストーリーで日本人が大好きな話ですが、この作品は、討ち入りを果たした赤穂浪士の中にいた、改易となった津山藩士であった神崎与五郎、横川勘平、茅野和助の3人と彼らに関わる女性を描きながら、赤穂藩に召し抱えられて日が浅い彼らにとって討ち入りは浅野内匠頭への忠義によるものだけだったのかを問う話となっています。 今回、単行本化するに当たり、雑誌に掲載された3人の話、討ち入り前に、離縁した妻に今生の別れを告げに会いに行く神崎与五郎とその元妻を描く「与五郎の妻」、開城か籠城かの殿の意思を聞きに行く途中に何者かの襲撃により瀕死の重傷を負った茅野和助と彼を看病する娘との淡い恋を描く「和助の恋」、横川勘平と勘平に思いを寄せる幼馴染で今は隠居の先々代の殿の間者となっている娘との悲しい恋を描く「里和と勘平」を挟む形で、冒頭に討ち入りの中に元藩士がいたことを知った津山森家の藩主の想いを描く「長直の饅頭」と、掉尾に赤穂藩が取り潰された何年か後に、赤穂の地に移ってきた津山藩の先代藩主の奥方の想いを描く「お道の塩」が書き下ろされています。 諸田さんの作品を読むのはこれが初めてです。赤穂浪士の中に神崎与五郎、横川勘平、茅野和助の3人の元津山藩士がいたこと、改易となった津山藩の城明け渡しを担当したのが赤穂浅野家の宗家である広島藩だったこと、20万石の大名であった津山藩は改易となったが、元藩主が隠居料をもらって森家は2万石の大名として存続したこと、この津山藩がそののち赤穂の地に移ってきたこと等の赤穂薄と津山藩の不思議な縁ともいうべき歴史的事実をうまく絡めて、新たな忠臣蔵のサイドストーリーを描いています。なかなかおもしろかったです。 |
|
リストへ |