図書館を舞台にした日常の謎ミステリです。5編からなる連作短編集です。
第1話は職員の目を盗んで閉館後の図書館に残ろうとする少年たちの謎、第2話は原語の絵本が無茶苦茶に並べられている謎、第3話は他人の名前をかたって美術書が借り出された謎、第4話は図書館周辺の土地持ちである秋葉が幼い頃見たという雪女の謎、第5話は図書館に誰かが置いていった廃校となった小学校の図書館の蔵書の謎を、秋庭市の外れに立つ秋葉市立図書館の司書今居文子を主人公に、先輩司書の能勢がホームズ役を務めて解き明かしていきます。
中では、第2話の「冬至ー銀杏黄葉」が好きです。それは、登場人物の深雪さんに負うところが大きいですね。
本の帯に“そこでは、誰もが本の旅人になれる”と書いてあれば、本好きとしては手に取らないわけにはいきません。そのうえに、図書館が舞台になるために、実際発行されている本が話のキーポイントとなって登場してくるのですが、第1話のキーになる本は、カニグズバーグの「クローディアの秘密」、第5話のキーになる本は、メアリー・ノートンの「床下の小人たち」で、両方とも家にある本なのでちょっとうれしくなってしまいました(ただ、読んだのは子供で、僕は話を知らないのですが)。 |