本の帯に「庄司薫、遠藤周作といった青春文学の懐かしい味わい」と書かれていました。庄司薫ファンの僕としては見過ごすことができず、思わず購入してしまいました。でも、読み終わった今言えます。いったいこの作品のどこに庄司薫の味わいがあるの?
京大生森本の独白のような文章で書かれています。読み始めると、なんと傲慢で思いこみの激しい自分勝手な男だろうと思わざるを得ない文章です。しかし、この文体も最初は鼻について仕方がなかったのですが、読み進めているうちに不思議と次第になじんできました。ときどきは思わず笑ってしまいました。
話は別れた彼女を研究と称してつけ回したり、彼女に恋する男と闘ったり(闘い方がこれまた愉快です。黒光りのするあるもの(!)を彼女の名前をかたって贈るのだから)と、とにかく自分が思うように生きる主人公が描かれています。あまり友達にはしたくない男です。これでは女性にもてないのも当たり前でしょう。彼の回りにいる学友たちも、みんな一癖も二癖もある変わり者です。類は友を呼ぶといいますが、京都大学というのはこんな男たちの溜まり場なんでしょうか。
最後はちょっとしみじみ終わるところが何ともいえません。
第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品です。しかし、この小説のどこをとってファンタジーと呼ぶのでしょうか。 |