すべてがFになる |
講談社ノベルス |
森博嗣の記念すべきデビュー作であり、メフィスト賞の第1回受賞作である。犀川創平と西之園萌絵とのコンビ第1弾である。14歳のときに両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究所に閉じこもった天才工学博士真賀田四季を訪ねた二人は、一週間、外部との接触を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体、そして部屋のコンピューターのディスプレイに残されたのは「すべてがFになる」という言葉だった。
理工学系の本格と呼べばいいのであろうか。論理が緻密に組み立てられた作品。ときに犀川が話す言葉には含蓄がある。 |
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そして二人だけになった |
新潮文庫 |
全長400メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリートのかたまりの中に作られたバルブといわれる空間に6名の科学者、建築家などが実験のために集まったが、プログラムの異常によりバルブから出ることができなくなる。そして、密室と化したバルブの中で次々と殺人が起こっていく。犯人は誰なのか。目的は何なのか。
最後の方で解決が示されたかと思うと、次にはまた別の解決が出される。読後何度か前のページを読み返して考えたが、未だによく分からない。果たして、どれが本当の解決なのだろうか。
各章の表題はアインシュタインの論文から取られているようだが、これが果たしてこの物語とどんな関係があるか分からないし、そもそも、何を言っているか自体分からない。当たり前だ。相手はかのアインシュタインなのだから。とにかく、自分自身非常に消化不足だ。真実はいったいどこにあるのだろう。 |
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四季 春 |
講談社ノベルス |
「すべてがFになる」を始めとする、いわゆる犀川&萌絵シリーズに登場する天才科学者真賀田四季を主人公とする四部作の第1弾。四季の少女時代、叔父の経営する病院で密室殺人が起きる。目撃したのは透明人間・・・。
とりあえず、密室殺人事件が起きるが、それほどの謎解きがあるわけではなく、この作品はミステリーというよりは、少女時代の四季について書かれた作品である。ミステリーと思って読むと裏切られる。ただし、一人称で書かれた文章は読者を戸惑わせるかもしれないが。 |
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四季 夏 |
講談社ノベルス |
「四季 春」に続く天才少女真賀田四季を描くシリーズ第2作。あれから5年。四季は13歳となり、すでに天才として世に知られています。新書の本の帯には「真賀田四季、誘拐される!!」と書いてあります。しかし、誘拐事件が描かれるのはこの本の中での一部であって、別に事件が起きて誰かがそれを解決するという話ではありません。描かれているのは真賀田四季その人です。森博嗣さんの犀川&萌絵シリーズ、Vシリーズを続けて読んでいる人には興味深く読むことができるかもしれません。若き頃の犀川や喜多、瀬在丸紅子等それぞれのシリーズの登場人物が顔を覗かせています。
最終的には犀川&萌絵シリーズの第1作目の「すべてがFになる」に繋がっていくのですが、どうなるのか次の「四季 秋」が楽しみです。
Vシリーズを読むのを途中で断念してしまっている僕としては、そちらのシリーズの人間関係がよく分からないのですが、ある人物が犀川&萌絵シリーズのある登場人物の姓を名のります。何故なんでしょうか。 |
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四季 秋 |
講談社ノベルス |
今回は、犀川と萌絵が中心のストーリーです。妃真加島で起きた事件から4年。萌絵は大学院生になっています。今回は何らかの事件が新たに起きて犀川たちがその事件を解明するという話ではありません。犀川と萌絵が妃真加島事件で真賀田博士が残したメッセージを読み解き、「すべてがFになる」の隠された事実を明らかにしていくという話です。
この話の中でS&MシリーズとVシリーズの関係が明かされます。ネタばれになるので、ここで言えないのは残念ですが、前作「四季 夏」で疑問に思っていたことが氷解しました。それにしても、まさか両シリーズの間にあんな大きなトリックがあったとは思いませんでした。森さんはいつからこの2つのシリーズを合わせた構想を考えていたのでしょうか。
「有限と微小のパン」以降の犀川と萌絵の関係がどうなるのかも、とても興味のあるところです。 |
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捩れ屋敷の利鈍 |
講談社ノベルス |
秘宝「エンジェル・マヌーバ」が展示されているメビウスの帯構造の「捩れ屋敷」で、密室状況のなか死体が発見され、エンジェル・マヌーバも消えます。その屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵は、謎を解くことができるのでしょうか・・・。
事件の謎より犀川&萌絵シリーズの萌絵とVシリーズの保呂草潤平がこの作品で競演していることの方が興味深いです。エピローグで保呂草潤平と瀬在丸紅子の思わせぶりな会話があります。このことが後日「四季」シリーズによって明らかにされることなのでしょうか。全然想像することができませんでした。 |
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墜ちていく僕たち |
集英社文庫 |
古いインスタントラーメンを食べて、なぜか性別が変わってしまった主人公たちを描いた5編からなる短編集。なぜ、ラーメンを食べると性別が変わってしまうかという合理的な理由は示されません。いえ、そもそも理由を主人公たちが考えるということもありません。そして、性別が変わってしまった主人公が元に戻るために右往左往するというわけでもありません。みんな現実を(現実というのもおかしいですが)素直に受け入れてしまいます。
なかでは表題作の「墜ちていく僕たち」を別の面から描いた「どうしたの、君たち」がおもしろいです。果たして、ラストのその後はいったいどうなるのでしょうか。それから、最後の「そこはかとなく怪しい人たち」は、肩すかしでしたね。
それにしても、いったいこの物語は何なんでしょうか。森さんの今までのシリーズものとは雰囲気が全く違う作品です。 |
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四季 冬 |
講談社ノベルス |
四季四部作の完結編です。
話は四季の思考を中心に進められていきます。そのため、話の内容があまりに理系的で、文系の僕の頭では文章の意味もよくわからず、そもそもことば自体の意味を理解することも難しく、正直のところ読んでいて楽しいものではありませんでした。まあ、天才である四季の思考を理解することができるわけないですね、と自分を慰めるしかありません。完結編といってもストーリーらしきものはありません。ところどころ、ああ、そういえばあの作品の中のことかとわかるところはありましたが。
漏れ聞くところによると、森さんの某作品と繋がってくるという話もありますが、どうなんでしょう。 |
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