文庫化されてハードカバーで刊行時に本屋大賞にノミネートされていたと知って、図書館で借りてきました。初めて読む宮下作品です。6編からなる連作短編集となっています。
冒頭、予約を取ることも難しいと評判のレストラン“ハライ”で、ある人物がテーブルについて店内を見渡すと、予約されているはずの席に空席があるという状況が語られます。ここから、各編は、それぞれの主人公がハライに予約をするまでのことが語られていくという体裁になっています。
6編の主人公は、内定していた会社が倒産し、今はコンビニでアルバイトをする青年、認知症の症状が出始めた一人暮らしの老女、係長になったが部下に仕事を命令できずに自分が土日も出勤して処理をするOL、母の死から引き寵もりとなりビデオカメラを通してしか人と向き合えない青年、ホテルのレストランでオムレツを作る係の青年、人から発する失敗の匂いを嗅ぎ取ることができるという不思議な能力を持つ女性です。
それぞれ様々な悩みを持つ6人が、これから一歩を踏み出そうとするためにハライの予約から始めますが、果たして空いている席に相手は来るのか、読者にいろいろ考えさせるラストも余韻が残っていいですね。 |