初めて読んだ三浦しをんさんの作品です。
東京のはずれに位置する“まほろ市”(これはどうも町田市がモデルのようですね。)の駅前で多田便利軒という名前の便利屋を営む多田。ある日多田は仕事帰りに高校時代の同級生行天に出会い、彼を事務所に寝泊まりさせることになってしまう。
高校に入学してから卒業するまで声を発したのはただ1回という変人、今ではちゃらんぽらんで、暴力的な男だが、どこか謎めいている行天。一方、人との繋がりを必要とする便利屋という商売をしながら、人との関係を疎んじている多田。ペットの世話、小学生の塾の送り迎え、恋人の代行など便利屋の仕事をする二人の周囲で事件は起きます。単に便利屋の仕事をする中で関わってくる事件の解決だけではなく、物語の底に隠されている、友達とは言えない多田と行天の不思議な関係は実は・・・という話(ホモではありませんよ)に加え、そんな彼ら二人が心の中に傷を持っていることが次第に明らかとされてくる展開にはページを捲る手が止まりませんでした。
彼らが出会う自称コロンビア人娼婦のルルとハイシーや麻薬密売人の星など、登場人物があまりに劇画的ですが、そう感じるのも各章の初めに書かれている挿絵も一因かもしれません。あまりに劇画的な挿絵です。ただ、話の内容からすれば、挿絵の二人はあまりに格好良すぎる気がしますね。
非常にテンポのよい文章で、内容のおもしろさだけでなく、スラスラ読むことができます。最後は希望のある終わり方。二人のコンビをシリーズ化してもおもしろいのではないでしょうか。 |