田舎から東京の大学に入学することになった僕。大学でいつの間にかセクトの争いや内ゲバに巻きこまれたり、年上の女性レイ子さんと同棲したりしている。「僕」って一体なんなのだろう。
第77回芥川賞受賞作。僕が大学生のときの作品。主人公が大学生であり、田舎から東京に出てきたという僕と同じ境遇に惹かれて購入した本。表紙にヘルメットをかぶり、手ぬぐいを顔に巻いた主人公が描かれていたが、気が弱そうな目だった印象が残っている。物語は全共闘時代の頃であるが、僕が大学生の頃は安保闘争の時代もはるか昔に過ぎ、いわゆる一般学生は学生運動から離れていた。しかし、なぜか僕の大学では試験の時期になるとヘルメットをかぶり、手ぬぐいで顔を隠した学生たちがどこからか現れて暴れ回り、学校側がロックアウトをするということが繰り返された。そのため、試験はレポートになり、僕らは無責任にも喜んだものだった。「僕って何」と、自分の存在意義を考えることなど考えない大学生活であった。そのときでさえ、こんな学生もいたんだと思ったくらいだから、今の学生たちには到底理解できないだろうなあ。 |