小説推理新人賞受賞作である「聖職者」を第1章に据えて、長編化した作品です。
とにかく、女性教師森口の生徒に対する語りだけで構成されている第1章だけでも衝撃的です。学年最後のホームルームで、担任の森口が校内で自分の娘が死んだ事件のことからクラスの生徒の中に殺害犯人がいるという指摘、そして犯人に対する森口の復讐を淡々と語っていきます。読み始めて頭に浮かんだのは、黒武洋さんの「そして粛正の扉を」です。あれほど破天荒ではないですが、やっぱり凄すぎる教師の復讐劇にあ然としてしまいます。
第2章以下は、クラスメートの女の子、犯人とされた少年Bの母親、少年B、少年A、そして再び森口のモノローグで事件が語られていきます。あまりに自分勝手な少年たちの犯罪とこれでもかというくらい恐ろしい復讐に読後感は悪いし、もちろん読んでいても非常に嫌な気持ちになってきます。ラストは本当に救いようがないですね。こんなことありえない、絵空事だと思いながらもグイグイ引き込まれていって、いっき読みでした。これで新人作家ですから、凄いですよね。オススメですが嫌な気持ちになること請け合いです。 |