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皆川博子の本棚

  1. 開かせていただき光栄です
  2. アルモニカ・ディアボリカ
  3. インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー

開かせていただき光栄です  ☆ ハヤカワ文庫
 初めて読んだ皆川さんの作品です。最近、海外ものは登場人物のカタカナの名前を覚えるのが苦手で、かなり読書量が減りました。案の定、この作品も最初は主たる登場人物である5人の弟子にニックネームがあったりして名前を覚えるのに苦労しましたが、慣れた中盤からはスラスラ読み進めることができました。
 物語の舞台は、18世紀のロンドン。外科医のダニエル・バートンと解剖学教室の5人の弟子たちが、墓あばきから買い取った妊婦の死体の解剖をしようとしていたところに、警察が乗り込むところから物語の幕が開きます。そのドタバタの中で、彼らの解剖学教室の暖炉の中から四肢を切られた死体と顔を潰された男の死体が発見されます。
 捜査をするのは盲目の治安判事、ジョン・フィールディングとその姪のアン=シャーリー・モア。フィールディングのキャラが興味深いです。盲目であることを補うために、聴覚が鋭くなり、人の話す口調から嘘を言っているのかどうかを感じ取ります。フィールディングの目となって若い女性でありながら捜査の現場に行くアンも気になるキャラです。
 ストーリーは、死体の謎を巡ってジョン・フィールディングたちの捜査を描くパートと四肢のない死体の身元とされる、詩人として身を立てたいとロンドンに出てきた青年ネイサン・カレンのロンドンに出てからの生活を描くパートが交互に語られていきます。
 暖炉の秘密の隠し場所に死体を置いたのは誰なのか、なぜネイサンは四肢を切断されたのか、証言が変わるエドとナイジェルは何を隠しているのかなど様々な謎を始め、本格ミステリらしい密室殺人の謎もあり、読んでいて飽きません。最後はものの見事に皆川さんに騙されました。

※題名は「お会いできて光栄です」をもじったもの。
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アルモニカ・ディアボリカ  ☆ 早川書房
 「開かせていただき光栄です」の続編です。
 舞台は前作から5年後。外科医ダニエル・バートンの5人の弟子は彼の元を去り、アル、ベン、クラレンスの3人は盲目の治安判事ジョン・フィールディングの発行する犯罪摘発情報新聞の編集を手伝い、前作で「死人として生きる」と言って去っていったエドとナイジェルは行方知れずとなっていた。そんな彼らの元に廃坑道内で空を舞う天使の目撃情報とともに死体が発見されたとの情報が入ってくる。その死体の胸には「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」と書かれていた。彼らは、ダニエル・バートンとともに現地に旅立つが・・・。
 物語は、坑道内の死体の事件の謎を追うジョン・フィールディングたちの話に、ガラス職人の娘の話やある青年が書いた手記などが語られるという複雑な構成になっています。前作同様、カタカナの名前が覚えられず、さらに前作以上に誰が誰だっけという複雑な人間関係に、ときどき前に戻って人の名前を再確認しながら四苦八苦して読み進めました。一方の話の中に登場する人物が、他方の話の中のどの人物であるのかがこの物語を読み解く重要なポイントとなっているので、名前と人間関係をはっきり把握するのが必要です。いやぁ~、難しかったですねえ。
 それと、おもしろかったのは、実在の人物であるベンジャミン・フランクリンの登場です。彼が凧を用いた実験で雷の正体が“電気”であることを明らかにした人物であるということが、ストーリーの中で重要な部分に関わりを持ってきますす。この物語のような事実はなかったでしょうけど、いかにもありそうに描く皆川さんは凄いです。
 今回は、ダニエル・バートンは目立った登場場面はなく、主人公と言えるのは盲目の判事、ジョン・フィールディングでしょう。彼が法とは何か葛藤するのも読みどころです。
 エドとナイジェルにあんな形で再会することもびっくりです。ラストの二行にはグッときてしまいます。あのラストでは続編は無理でしょうか。
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インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー  ☆  早川書房 
 アメリカ独立戦争のさなか、投獄されていたエド・ターナーの元を男が訪れる。新聞記者のロディと名乗った男は植民地開拓者として名を馳せたウィルソン家の三男・モーリスから依頼され、イギリス人と原住民の女との間に生まれたアシュリー・アーデンをなぜ殺したのかと問い、エドにアシュリーの手記を見せる。そこにはアシュリーの幼い頃から独立戦争の渦中に巻き込まれていく様子が書かれていた。エドは自分はアシュリーの殺害犯として投獄されているのではないと言う・・・。
物語はアメリカ独立戦争中、国王派か独立派かに揺れるアメリカの地で国王軍の中で起きる事件が描かれていきます。事件の関係者の中にいるのが、国王軍の補給部隊員としてイギリスから派遣されてきたエドとクレランスです。補給隊隊長や原住民の死の謎をエドが明らかにしていきます。
 「開かせていただき光栄です」から始まるシリーズ第3弾です。とはいえ、前作の「アルモニカ・ディアボリカ」が刊行されたのは2013年なので、それからもう8年が経っています。前作までの内容はほとんど覚えていないのですが、事件はこの作品単独で完結するので、前作までを読んでいなくても大丈夫です。ただ、前作までの中で描かれたエドとクレランスの人物像や二人がなぜ国王軍の兵士としてアメリカの地に来ることになったのかを知ることによって、最後のクレランスの手紙に名前が挙げられていた人たちとの関係が分かり、グッときます。シリーズファンにとっては悲しいラストとなりました。 
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