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増田忠則の本棚

  1. 三つの悪夢と階段室の女王

三つの悪夢と階段室の女王  双葉社 
 4編が収録された短編集です。どれもが非常に後味が悪い作品です。
 冒頭の「マグノリア通り、曇り」は、第35回小説推理新人賞受賞作です。娘が誘拐され、犯人からマグノリア通りに呼び出された斉木は、犯人がビルの屋上から飛び降りようとしている姿を見る。斉木はちょっと前に通り沿いのビルから飛び降りようとしていた男に酔った勢いもあって「さっさと飛んじまえ!」と言い、その後に男が飛び降りるという事件を経験していた。犯人は斉木のその行動を非難し・・・。悪意の伝播の中で集団心理も重なって次第に理性を失ってしまった斉木の行動は確かに非難されるべきものですが、だからといって関係のない娘を人質にとることはないだろうと思ってしまうのは僕だけでしょうか。正義がおかしな方向に歪められた犯人の行動こそあまりに異常です。
 「夜にめざめて」は、パンエ場に勤務するフリーターの高橋が近所で頻発する通り魔事件の犯人に疑われるところから話は始まります。同じ団地に住む女性の密告によって自警団の標的にされてしまう高橋があまりに哀れです。SNSも盛んな今は、こうした噂が真実のように広まってしまうのは怖いです。ラストの展開が4編の中で一番ミステリらしい作品です。
 「復讐の花は枯れない」は、高校生のときに同級生を罪に陥れ、結果として自殺させてしまった沢井が、大人となり我が子を持ったときに、同級生をかわいがっていたその叔父から復讐を受けるという話。これも「マグノリア通り、曇り」と同じように、被害者に非難されるべき点は大きいですが、そうはいっても犯人の行動が異常すぎます。事件直前ならともかく、25年も復讐の気持ちを抱いていられるのか、ましてや自分にも大事な家族がいるのに、子どもを持った親の気持ちをわからせてやろうと時が過ぎるのを待つなんて、あまりに狂的。復讐の相手だけではなく、その親兄弟まで平気で手にかけようとは、犯人には単なる異常者です。
 「階段室の女王」は、勝手な思い込みが次第に自分を追い込んでしまう女性を描いたもの。前の3作品とはちょっと感じが違って、この作品集の中で浮いています。 
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