昭和53年度の第24回江戸川乱歩賞受賞作です。今ではグイン・サーガが有名な栗本薫さんですが、当時は中島梓という名前で評論家として名前が出始めた頃で、彼女としては初めての小説だったのではないでしょうか。
当時は長髪ばやり、この作品の主人公たちもアフロヘアにポニーテールという大学生です。主人公の名前は、栗本薫。作者と同じ名前の大学生です。作家と主人公の名前が同じというのは、海外ではエラリー・クイーンとかありますが、日本では僕が好きだった「赤頭巾ちゃん気をつけて」で芥川賞を受賞した庄司薫さんがそうでした。江戸川乱歩賞受賞作品ということだけでなく、主人公が庄司薫さんの薫くんシリーズと同じ薫という名前に惹かれたこともあって、購入して読んだのですが、今回20年以上ぶりに新風社文庫で発売されたものを再読しました。
20年以上たっても古くさいという感じは全然受けませんでした。現在に舞台を移しても違和感なく読むことができる作品です。密室トリックはよくあるパターンでしたが、○○トリック(ネタバレになるので伏せます)はわかりませんでした。やられたなという感じです。
青春ミステリーらしく、ラストの謎解きの場面では、大人になる前の主人公たちの気持ちが吐露されていて、同年代で読んだときは共感を覚えたものでした。当時はいつか自分も彼らに批判される側(大人)になるとは思いもしませんでしたけど。 |