傍若無人の名探偵猫丸が活躍する最初の長編作品である。名探偵といえば、最近では島田荘司の御手洗潔、有栖川有栖の火村英生、笠井潔の矢吹駆、それに森博嗣の犀川創平など、とにかくかっこいいという印象が強いのであるが、この猫丸は、見た目は小柄で童顔、ぶかぶかの服、猫の目のように動く大きな丸い目といった、「かっこいい」という印象にはほど遠い名探偵である。
容姿端麗の名探偵が鮮やかに事件を解決するなんて当たり前すぎる。こんなユニークなキャラの探偵がいてもいいんじゃないかなあ。
事件は引退した不動産業者が離れの一室で殺害されることから始まる。その後その主人の霊を呼び出そうとした霊媒が降霊会の最中に殺されるという事件が起きる。ここにいたって、主人の孫の大学の先輩である猫丸がいよいよ事件に顔をつっこんでくる。
この作品は単行本で読み、今回文庫化に際して改めて読んでみたが、二度目だったため初めて読んだときには分からなかった著者が読者をミスリードしていく記述がよく分かり、楽しく読むことができた。読者は著者にゆめゆめ騙されることなかれ! |